2016 年 38 巻 4 号 p. 267-271
脳動静脈奇形(arteriovenous malformation; AVM)周囲の脳浮腫が,出血と時期をずらして悪化し,その後自然軽快した症例を経験した.症例は62 歳の男性で半年前に脳出血を発症し,他院で保存的加療を受けた.左下肢の麻痺・しびれを生じて当院を受診し,頭部CT では右頭頂葉の出血痕周囲に低吸収域を認めた.入院後,症状と画像所見がともに増悪した.脳血管撮影では右前大脳動脈の分枝からfeeding される1 cm 大のナイダスと,上矢状洞へ流入するdrainer を有するAVM を認めた.1 カ月後の外科治療前には自然経過で症状と画像所見がともに改善していた.さらに症状経過に一致してMRI で,AVM のdrainer が流入する皮質静脈の遠位側の描出の変化を認めた.AVM の静脈灌流のうっ滞によりAVM 周囲の浮腫が出現し,その後静脈灌流が改善し浮腫も改善したと推察した.