2017 年 39 巻 3 号 p. 195-199
症例は73 歳の男性.側方へ転落して頭頸部を打撲し,第6 頸椎骨折と小脳梗塞を発症した.脳血管造影検査によって右椎骨動脈の起始部閉塞とintimal flap を伴う左椎骨動脈の解離を認めたが,保存的に治療して経過良好であった.左椎骨動脈は頸椎横突孔内への侵入部位で解離しており,頸椎骨折で偏倚した椎体が椎骨動脈の横突孔侵入部に力学的負荷をかけて動脈解離を合併したと考えた.右椎骨動脈については,転倒時の頸部左側屈により右椎骨動脈が過伸展されて解離し,血栓症を来して閉塞したと推測した.外傷に伴う両側椎骨動脈解離の報告は散見されるが,発症メカニズムについて考察した報告は少なく,文献的考察を加えて報告する.