2019 年 41 巻 2 号 p. 125-131
要旨:重症脳卒中で回復不可能な状況では,臓器提供を前提とした法的脳死判定を行う場合以外は,医療・ケアの方針は臨床現場に委ねられている.また,突然発症の脳卒中には,発病前の本人の意思を確認できないことが多いという特殊性がある.一般社団法人日本脳卒中学会は,医療・ケアチームによる重症脳卒中の終末期の対応についての判断・方針決定を支援する目的で,本ガイドラインを作成した.本ガイドラインでは,「脳卒中を原因とした,全脳の不可逆的な機能不全で,いかなる治療を行っても死が避けられない状態」を「脳卒中による全脳機能不全」と定義した.さらに,脳卒中における終末期で,臓器提供を行わず,家族等に医療・ケアの変更・中止の希望があれば,本ガイドラインで定めた方法で全脳機能不全の確定判断を行い,各施設の臨床倫理委員会などの審議を経て病院長の承認のもと,延命治療の中止や差し控えを行いうることを提言している.