2019 年 41 巻 4 号 p. 304-310
要旨:症例は61 歳男性.2016 年6 月にくも膜下出血を発症し右内頸動脈後交通動脈瘤に対してネッククリッピングを行い,同年9 月に左内頸動脈未破裂脳動脈瘤に対してネッククリッピングを行った.2017 年6 月に構音障害が出現し右側放線冠の脳梗塞と右総頸動脈から内頸動脈にかけての閉塞を診断された.保存的加療を行ったが繰り返し左上下肢の脱力と構音障害が出現したため,右総頸動脈から内頸動脈にかけて経皮的頸動脈ステント留置術を施行した.術後増悪した神経学的異常所見はなく,繰り返し出現していた一過性脳虚血発作も消失し,mRS1 にて転院となった.総頸動脈から内頸動脈にかけての完全閉塞に対する治療として確立したものはないが,本症例のように内科的治療に抵抗性があり,総頸動脈からの閉塞で両側の前頭側頭開頭術後ということもありEC-ICバイパスが困難な症例に対して,ステント留置術は有効な手段になり得ると考えられた.