2020 年 42 巻 3 号 p. 171-175
要旨:血液凝固異常症の一つである先天性フィブリノゲン欠損症は非常に稀である.今回,先天性フィブリノゲン欠損症患者に合併した脳内出血の1 例を経験した.症例は46 歳男性.2 日前からの頭痛と全身しびれ感を主訴に近医へ救急搬送となり,右脳皮質下出血の診断にて当院転院となった.搬送後に意識レベル低下,瞳孔不同および左上下肢麻痺(MMT 2/5)が出現し,頭部CT 検査で血腫増大を認めたため手術適応と判断した.先天性フィブリノゲン欠損症の既往があり,術前検査で止血凝固異常を認めたため,術前より新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma: FFP)を投与し,開頭血腫除去術を施行した,周術期はフィブリノゲン製剤を定期投与した.先天性フィブリノゲン欠損症に対してFFP やフィブリノゲン製剤を適切に投与することで再出血は認めず,良好な経過をたどった症例であった.