2020 年 42 巻 4 号 p. 233-238
要旨:わが国の脳卒中大規模調査研究は少なく,特にくも膜下出血に関しては全体の6%程度であるため,疫学的に不明な点も多い.代表的な「脳卒中データバンク2015」でさえ,局在明瞭な破裂脳動脈瘤は4,153 例と少ないため,労災病院病職歴調査研究データから局在明瞭な破裂脳動脈瘤3,963 例を抽出し,その特徴を明らかにする目的で分析した.破裂脳動脈瘤は,女性が男性の2 倍多く,平均年齢は男性60.1 歳,女性68.9 歳で,ピークは男性60 歳代,女性70 歳代であった.局在はウィルス脳動脈輪前半が80%を占め,前交通動脈(29%)・中大脳動脈(27%)・内頸動脈周囲(23%)の順で多かった.局在比率は,脳卒中データバンクでは男性で明らかに前交通動脈が多いが,本研究では男女差を認めなかった.男性で中大脳動脈の発症年齢が若い傾向があった.さらに24 時間以内死亡例を抽出すると,中大脳動脈が多く,特に男性で有意であった.詳細解明には全国レベルでの全例調査が望まれる.