2021 年 43 巻 2 号 p. 117-123
要旨:【背景および目的】機械的血栓回収療法後に再開通が得られても急性脳腫脹を生じる例をしばしば経験するが,その中には比較的良好な転帰を示す例も存在する.そこで急性脳腫脹の関連因子および転帰への影響について後ろ向きに検討した.【方法】2013~2019 年に本治療を施行した ICA,M1 閉塞で,mTICI 2b 以上の再開通を得た101例を対象とし,急性脳腫脹を認めた群(急性脳腫脹群:S群)と認めなかった群(非脳腫脹群:N群)で比較検討した.【結果】急性脳腫脹は18例(17.8%)で認められた.S群はN群に比して入院時 NIHSS が高く,DWI-ASPECTS が低値であったが,3カ月後転帰良好の割合に有意差はなかった(27.8% vs 45.8%).S群では11例(61.1%)が開頭減圧術を受け,同群のうち5例が転帰良好(mRS≤2)であった.多変量解析では,DWI-ASPECTS 値が急性脳腫脹の出現と関連していた(オッズ比0.55,95%信頼区間0.39–0.72).【結論】急性脳腫脹を生じても,若年で ASPECT 高値例に開頭外減圧術を行えば良好な転帰が得られる可能性がある.