2025 年 47 巻 5 号 p. 323-329
症例は71歳女性.神経線維腫症1型(neurofibromatosis type 1: NF-1)と診断されていた.無症候性の解離性頭蓋外内頚動脈瘤の経過観察中に,嚥下障害,嗄声を来たし受診した.精査で内頸動脈瘤の拡大を指摘され,治療介入を行う方針とした.治療方法決定のため内頚動脈血流遮断試験(balloon occlusion test: BOT)を施行し,虚血耐性を確認した.
血管内治療の手技を用いてtrappingを行い良好な結果を得た.しかし,内頚動脈BOT部の新規解離発生が生じており,NF-1の血管脆弱性を再認識した.NF-1は中膜菲薄化や弾性板断裂による血管脆弱性のために血管病変を合併することが知られているが,血管脆弱性は治療介入時の方法の選択にも重要な影響を及ぼすと考えられた.本症例では動脈瘤の近位と遠位のコイル塞栓術を行うことで,動脈瘤が血栓化し早期からの症状改善が得られた.