論文ID: 10448
症例は83 歳,男性.一過性脳虚血発作を契機に両側内頸動脈狭窄症を指摘されており,非弁膜症性心房細動に対しワルファリン内服中であった.構音障害,左顔面麻痺,左上肢の脱力を主訴に来院し,拡散強調画像で右中大脳動脈に散在性の多発脳梗塞を認めた.入院後の頸動脈超音波検査で右内頸動脈に付着する可動性構造物が確認された.脳梗塞再発予防としてダビガトランとアスピリン内服による外来通院加療を継続し,可動性構造物は経時的に縮小・消失したため,同構造物は血栓であったと判断した.頸動脈可動性血栓を有する脳梗塞症例は再発率が高いが,有効な再発予防法や血栓除去手段についてはよくわかっていない.頸動脈可動性血栓の縮小・消失に対するダビガトランを含む非ビタミンK 阻害経口抗凝固薬の投与は,類似の症例における治療選択肢の一つとなり得る.