論文ID: 10976
離島発症脳主幹動脈閉塞症(LVO)に対する血栓回収療法(MT)の報告は少なく,全国的診療実態は明らかではない.今回,長崎県下最遠隔離島(対馬)発症のLVO(76歳男性:脳底動脈閉塞症)において,本土基幹施設と連携した,離島施設前脳卒中ホットラインシステム(I-SHOT)を介し,初のdrip, ship and retrieve(DSR)法を経験した.発症後約5時間で再開通し,転帰は良好であった.遠隔離島では,医療環境上の制約で専門的緊急治療が困難な現状があり,MT施行可能な機会は限られている.当院でも過去6例のLVOでDSR法によるMTを企図したが,時間超過や天候悪化・梗塞完成等の理由で断念した.近年,I-SHOTの時短効果により,MT可能な時間内に本土へ到着する例が増加している.対馬発症LVO例で初のDSR法が奏功した症例を提示し,過去のLVO例を踏まえて報告する.