脳卒中
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脳血管攣縮におけるeicosanoidsの関与について
第2報 特に5-lipoxygenase代謝産物の関与を中心として
入江 恵子
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1988 年 10 巻 2 号 p. 155-163

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抄録

クモ膜下出血後に発現する脳血管攣縮において, 5-lipoxygenase産物であるleukotriene (LT) の関与について検討した.成猫を用いて大槽内自家血注入法によりクモ膜下出血を作成し, 72時間後transclival approachにより脳底動脈を露出し, thromboxane A2 (TxA2) 安定誘導体であるSTA2 (10-8, 10-7, 10-6M), LTC4, LTD4 (10-6, 10-5, 10-4M) の各々を局所投与したところ, 濃度依存性に脳底動脈の狭小化が認められた.さらに, 自家血注入より72時間後に露出した脳底動脈表面に微量の3日間孵置した血液髄液混合液を局所投与することにより脳血管攣縮モデルを作成した.混合液局所投与10分後に血管径は著明に狭小化し以後2時間にわたって持続したが, rCBFは時間とともに漸次減少した.混合液局所投与30分前より5-lipoxygenase阻害剤, LT拮抗剤の各々を静脈内投与し, 血管径, rCBF, 血小板凝集能に与える影響を検討した.いずれの薬剤投与群とも攣縮寛解作用は認められなかったが, 5-lipoxygenase阻害剤, LT拮抗剤はrCBFの減少を阻止し, むしろ時間と共にrCBFを軽度増加させる傾向が認められた.また, 各薬剤投与前後において血小板凝集能の変化は認められなかった.以上より, 脳主幹動脈の脳血管攣縮が発生すると, 時間と共に細動脈の攣縮状態が進行するが, これには細動脈壁におけるLTの増加が関与するものと考察した.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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