1989 年 11 巻 3 号 p. 279-284
十分な精度と優れた再現性を有し, 反復して使用することが可能なニッケルメッシュを開発し赤血球変形能測定法に応用した.本方法を用いて, lacunar strokeにおける赤血球変形能を評価した.対象は, 年齢, 喫煙歴, 白血球数をマッチさせたlacunar stroke患者20名と対照群20名である.変形能指数 (Deformability Index) は, 対照群と患者群でそれぞれ0.878±0.0238, 0.847±0.0366 (p<0.01) であり, 患者群で変形能が低下していることを明らかにした.赤血球変形能の決定因子との関連性を検討する目的で, 平均赤血球容積 (MCV) と平均赤血球血色素濃度 (MCHC) とを同時に測定したが, いずれも両群で統計学的有意差は認められなかった.lacunar stroke患者では, 穿通枝系動脈の狭窄部位において局所的な潅流異常が存在することが示唆された.lacunar strokeにおける赤血球変形能低下が発症要因であるのか, あるいは発症後二次的に生じた結果であるのか, 今後さらは健常者における変形能正常群と低下群とを長期的に追跡調査することが重要であると考えられた.