1989 年 11 巻 5 号 p. 491-499
脳血管障害患者のX線CTとpositron emission tomography (PET) の所見を対比し, 前者で検出できない大脳皮質および小脳半球の脳循環・酸素代謝の異常について発現機序と異常の程度の面から検討を加えた.17例22所見は発現機序により, 1) 虚血性病変とそれに対応した神経症状を示すがX線CTでは検出されない場合, 2) 大脳皮質や小脳半球の入出力線維の損傷による遠隔効果 (diaschisis), 3) fogging effectの一時期, の3群に大別されると考えられた.また各群の病巣部位の脳血流量と酸素代謝率について正常値と対称部位 (健側) に対する減少率を算出し, 定性的評価の裏付けとした.PET上の異常を生じる原因は多様であることが明らかとなり, その所見は神経学的所見やX線CT, 脳血管撮影などの補助的診断法の所見を踏まえて評価する必要があると考えられた.