脳卒中
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急性期脳血栓症に対するUrokinase・heparin併用投与の臨床的有用性について
穿通枝梗塞87例を対象としたsingle blind control study
土谷 隆藤掛 邦彦奥 憲一
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キーワード: 穿通枝脳血栓
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1990 年 12 巻 2 号 p. 177-184

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抄録

急性期脳血栓症に対するUrokinase (UK) の臨床効果を評価するため, 穿通枝脳血栓87例 (発症3日以内, 初回発作例) を対象に, 無作為に分けたUK・heparin投与群 (UK-H群) と非投与群 (C群) 間で, 3ヵ月後の歩行機能を比較検討した.対象はUK-H群44例とC群43例であり, 両群間に年齢, 合併症, 入院時の麻痺レベルの差はなかった.入院時の下肢筋力がDeJongの分類で0/5~2/5の重度麻痺例において, 3ヵ月後の歩行機能はUK-H群の方がC群に比し, 有意に良好であった (p<0.05).さらに70歳以上の重度麻痺例では, 入院後2W以内に麻痺の改善をみた例がC群4/12に対し, UK-H群6/7とUK-H群に多かった.入院時の下肢筋力が3/5以上の例では, UK-H群とC群の間に転帰の差はなかった.また, UK・heparinの投与量による差も認めなかった.以上より, 穿通枝脳血栓の片麻痺重度例に対するUK-heparin併用投与の臨床的有用性が客観的に認められた.投与量は1日6万単位で充分であった.
急性期穿通枝脳血栓87例を対象に, UKの臨床的効果を明らかにする目的で, UK・heparin併用投与例と非投与例の間で, 3ヵ月後の歩行機能を比較検討した.
1.入院時の下肢運動機能障害が重度な例において, UK・heparin投与による下肢機能改善と良好な転帰が有意に認められた.下肢運動機能障害が軽度な例では, UK・heparin投与の有用性は認めることができなかった.
2.有効機序は血栓溶解ではなく, 微小循環改善に求めるのが妥当であると考えた.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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