脳卒中
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コルサコフ症候群をきたした傍正中視床中脳梗塞の1例
本庄 弘次橋本 洋一郎山中 信和米原 敏郎荒木 淑郎
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1991 年 13 巻 1 号 p. 21-27

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抄録

急性心筋梗塞後に過睡眠状態, 垂直性眼球運動障害, さらにコルサコフ症候群を呈した傍正中視床中脳梗塞の50歳男性を報告した.心疾患の存在, 臨床経過, 病巣部位からtop ofthe basilar syndromeを呈した脳塞栓症と考えられた.意味記憶の障害はなかったが著明なエピソード記憶の障害があり, 作話と病態に対する無認知を伴う健忘が持続し, 社会生活を制限され視床性痴呆に近い病態であった.また視床性の言語障害, 下転障害優位の垂直性眼球運動障害, およびpseudosixth nerve palsyを一過性に認めた。傍正中視床中脳梗塞では健忘が高頻度に認められるが, コルサコフ症候群を来すことは極めて稀である.本症例では傍正中視床中脳梗塞の責任血管であるparamedian thalamic artery領域のみならず一部tuberothalamic artery領域に両側性の病変の進展を認め, 乳頭体視床路の両側性障害によりコルサコフ症候群を来したと考えられた.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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