1992 年 14 巻 5 号 p. 499-504
低血糖性片麻痺hypoglycemic hemiplegia (HH) の1例を報告した.症例は28歳女性.インスリン依存性糖尿病で13歳よりインスリン治療を受けていた.2度の一過性の左半身の脱力発作があり入院した.頭部CT, MRIおよび脳血管撮影で異常を認めず, 入院後同様の左片麻痺発作があり, その際の血糖値が54mg/dlで, 糖質の摂取により改善傾向がみられたことから低血糖性片麻痺と診断した.入院時 (HbA1c6.3%) のSPECTでは右基底核~内包の血流が低下していたが, 血糖を高値に保った4ヵ月後 (HbA1c7.7%) は同部の血流低下は改善しており, 以後片麻痺発作を生じなかった.HHは比較的まれといわれているが, 脳血管障害と誤認されている可能性があり, 糖尿病症例においては本症も念頭におく必要があると考えられた.