1994 年 16 巻 2 号 p. 123-130
プラスミノーゲン異常症を合併し, 特発性頭蓋内内頸動脈解離により脳梗塞を呈した1例を経験した.症例は41歳女性, 右上肢麻痺および左眼の視野狭窄で発症し, 左中大脳動脈領域の脳梗塞と左網膜動脈分枝閉塞を認めた.脳血管造影で左内頸動脈cavernous portionにstring signを認め, 頭蓋内内頸動脈解離と診断した.抗凝固療法により第17病日には一旦再開通を認めたが, 第27病日に再閉塞をきたし, MRIでpetrosal-cavernous portionに2種類の内腔を描出した.10カ月後に脳梗塞を再発したため, 外科的バイパス手術の適応を検討する目的でポジトロンCTを施行したが, 脳血流・代謝ともに低下するmatched hypoperfusionの所見であった.左側頭動脈前額枝の生検では, 基底膜の多層化, 内膜の肥厚, 無構造物の沈着, コラーゲンの減少など全身性の血管病変を示唆する所見が認められ, 外科的治療は見送った.また, 家族性プラスミノーゲン異常症が判明し, 動脈解離後の血栓形成助長に関与した可能性が考えられた.