脳卒中
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虚血負荷後の海馬manganese superoxide dismutase発現の検討
虚血耐性現象との関連性
清水 聡一郎松山 知弘杉田 實
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1995 年 17 巻 1 号 p. 58-69

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抄録

脳神経細胞内活性酸素消去酵素であるmanganese superoxide dismutase (MnSOD) に対する脳虚血の影響を評価する目的で, 砂ネズミの一過性前脳虚血後の海馬MnSODの変動をin situ hybridization histochemistryと免疫組織化学を用いて検討した.虚血負荷としては遅発性神経細胞死を起こす5分間虚血負荷あるいは非致死的であり虚血耐性を誘導する2分間虚血負荷を選定し, さらに虚血耐性獲得後の5分間虚血の影響も検討した.非虚血脳ではMnSODmRNAおよび蛋白はCA3領域で豊富に発現していたが, CA1錐体細胞ではほとんど認められなかった.5分虚血負荷後は虚血後1日目までに, CA1領域を含め海馬全領域で一過性のMnSODm RNA発現の増強をみたがCAI錐体細胞には蛋白発現は観察されなかった.虚血負荷後3日目にはMnSODmRNAと蛋白はCA1の白質領域に増殖するグリア様小細胞に発現した.2分虚血負荷後はMnSODmRNAと蛋白発現がCA1錐体細胞で認められ, これは虚血負荷後1週間持続した.2分虚血の前負荷後5分虚血を施行した群では, CA1錐体細胞のMnSOD発現は新たな5分虚血負荷前後での変動は少なかったが, その発現は虚血後1週間は維持されていた.これら神経細胞死を伴わない虚血負荷後はグリア細胞でのMnSOD発現は観察されなかった.以上より致死的負荷ではMnSODをはじめとする内在性活性酸素消去酵素は脆弱神経ではその活性が減弱し, グリアで活性充進することが示唆された.反対に非致死的虚血負荷後にはMnSODは脆弱神経細胞に新たに発現誘導され, その後の致死的虚血負荷後も維持されることから, 虚血耐性現象には神経細胞内在性MnSODの発現誘導が関与していることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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