脳卒中
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慢性期脳血管障害に対する降圧薬選択の現況
尾前 豪井林 雪郎藤井 健一郎佐渡島 省三藤島 正敏
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1995 年 17 巻 3 号 p. 226-231

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抄録

慢性期脳血管障害患者の高血圧に対して専門医がどのような降圧薬を選択しているかを断面調査し, 血圧管理や年齢との関係を明らかにするために本研究を施行した.
対象は九州大学第二内科および関連施設 (計7施設, 脳卒中担当医17名) の脳卒中専門外来に通院する脳血管障害患者762例で, 年齢, 診断名, 高血圧の有無, 服用中の降圧薬の種類, 再来時血圧を断面調査した.
脳血管障害のうち, 高血圧あるいはその既往を有するものは563例 (高血圧群, 73.9%) で, 降圧薬は405例 (71.8%) に処方されていた.降圧薬処方例の血圧平均値は144±17 (mean±SD) /82±11mrnHgで, 非処方高血圧群 (158例) のそれは140±17/80±10mmHgに比べやや高い値を示した (unpairedt-test, p<0.05).降圧薬の種類では, カルシウム拮抗薬 (Ca拮抗薬) の使用が最も多く (58.4%), 続いてアンギオテンシン変換酵素阻害薬 (ACE阻害薬, 23.1%), β-遮断薬 (16.0%), 利尿薬 (5.9%) の順であった.単独・併用をみると, Ca拮抗薬の単独が34.8%で最も多く, Ca拮抗薬とACE阻害薬 (10.5%), Ca拮抗薬とβ-遮断薬 (5.9%), ACE阻害薬単独 (5。7%), β-遮断薬単独 (5.5%), Ca拮抗薬とACE阻害薬とβ-遮断薬 (2, 3%), Ca拮抗薬とACE阻害薬と利尿薬 (2.3%) の順に多かった.さらに, 高齢者ではCa拮抗薬が処方される頻度がより高く, とくに単独使用することが多い傾向にあった.
以上より, 慢性期脳血管障害の専門外来では, Ca拮抗薬が第一選択薬として使用され, 降圧が不十分な場合にはACE阻害薬, β-遮断薬が併用薬として選択されていた.かかる傾向は高齢者ほど強かった.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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