脳卒中
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左後大脳動脈閉塞症により視覚失語を呈した1例
下村 辰雄
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1995 年 17 巻 4 号 p. 373-378

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抄録

左後大脳動脈閉塞症にて視覚失語, 純粋失読, 色名呼称障害を呈した1例 (84歳, 右利き, 男性) を報告した.神経学的には右同名性半盲と一過性の右片麻痺, 右半身感覚低下を認めた.神経心理学的には日常物品の視覚的呼称は15%, 触覚的呼称は70%, 絵カードの呼称は20%可能であった.呼称不能な物品, 絵カードの用途や内容を動作や言葉で説明することは80%可能であった.呼称できない物品や絵カードを言語的命令により指示したり, カテゴリー化することは可能であった.読みの障害は著明で自分が書いた字さえ読むことができなかった.色名想起, 照合, 指示は100%可能であったが, 色名呼称は40%しかできなかった.CT, MRI, SPECTでは左後頭葉楔部, 舌状回, 紡錘状回, 海馬傍回, 脳梁膨大に梗塞巣を認めた.文献報告例の症候学的検討から, 本例の視覚失語の発症機序として右視覚領域と左言語領域との半球間離断が考えられた.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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