1996 年 18 巻 4 号 p. 326-331
両側前大脳動脈領域に限局性梗塞を発症した両側内頸動脈閉塞の1例を報告した.症例は71歳, 男性, 意識障害, 四肢麻痺で発症し入院.入院時, 意識障害, 四肢麻痺, 両側錐体路症状を認め, CTにて両側前大脳動脈領域に梗塞巣を確認した.脳血管造影所見では両側内頸動脈の閉塞と側副血行の発達を認め, 梗塞巣への血行は主として左外頸動脈の分枝を介し左眼動脈からの逆行性ものであった.本例は内頸動脈閉塞部付近よりのartery to artery embolismが左前大脳動脈起始部を閉塞したことにより発症したことが考えられたが, 血行が脆弱であったことより血行力学性の機序により梗塞が発症したことも否定できず, 今後両内頸動脈閉塞症例において血行動態, 血液レオロジー, 血行力学的に検討を必要とする貴重な1例と考える.