脳卒中
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砂ネズミの5分間前脳虚血負荷が示した長時間前脳虚血における死亡率抑制効果
福岡 正晃美馬 達夫森 惟明
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1997 年 19 巻 2 号 p. 145-152

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抄録

遅発性神経細胞死にアポトーシス (programmed cell death) が関与しているという最近の報告は, 「海馬CA1の神経細胞が短時間の前脳虚血に極めて脆弱で選択的な細胞死を引き起こすことは, あたかも電気回路のフユーズの様な機序で, 将来の長時間の虚血侵襲の際に脳全体と生命を守っている」という仮説の可能性も示唆する.我々は, この仮説を検証する一つの実験方法として, 砂ネズミを用い, 5分間の前脳虚血を前もって負荷し海馬CA1の選択的な細胞死を生じさせておき, 10日後に15分間の前脳虚血を負荷した場合, 広範な脳の神経細胞死が予防でき, 生体の死も防ぐことが出来るか検討した.予め5分間虚血を負荷せずに15分間虚血を加えた群 (A群) の2週間の生存率は41%であったが, 予め5分間虚血を負荷し10日後に15分間虚血を加えた群 (B群) は65%と統計学的な有意差をもって生存率が向上し, また体重減少もより軽度であった.しかし, 組織学的検討では, 海馬CA3, 海馬支脚での細胞死は両群で差がなく, また, 特に大脳皮質の表層での神経細胞死はB群がA群に比しより重篤であった.予め負荷しておいた5分間前脳虚血は, 生体にとって好ましい効果を示したが, その機序に関しては今後の検討が必要である.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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