脳卒中
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砂ネズミの5分間前脳虚血負荷が示した長時間前脳虚血における死亡率抑制効果(第2報)
福岡 正晃美馬 達夫平山 晃斉森 惟明
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1998 年 20 巻 2 号 p. 258-266

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抄録

遅発性神経細胞死にアポトーシス(programmed cell death)が関与しているという最近の報告は,「海馬CA1の神経細胞が短時間の前脳虚血に脆弱で選択的な細胞死を引き起こすことは,将来の長時間の虚血侵襲の際に脳全体と生命を守っていることに役立っている」という仮説が成り立つ可能性を示唆する.我々は,この仮説を検証する一つの実験方法として,砂ネズミを用い,予め5分間の前脳虚血を負荷せずに15分間前脳虚血を加えた群(A群)と,予め5分間の前脳虚血を負荷し海馬CA1の選択的な細胞死を生じさせておき,10日後に15分間前脳虚血を負荷した群(B群)において,2週間の観察で,B群では有意に生存率が高く,体重減少も軽減していることを前回報告した(脳卒中19: 145-152, 1997).しかし,2週間生き残った砂ネズミの組織学的検討では両群の違いはほとんどなかったため,今回は死亡する前の時点での脳浮腫測定および組織学的解析を新たに行った.大脳の水分含有量を15分間前脳虚血の2時間後,2日後,7日後について調べたところ,B群はA群より脳浮腫の増加が有意に抑制されていた(p<0.01).また,15分間前脳虚血の2日後の大脳皮質および視床下部の組織学的検討において,B群では細胞障害が少ない傾向が認められた.予め負荷しておいた5分間前脳虚血は,生体にとって好ましい効果をもたらしたが,その効果には脳浮腫抑制および細胞障害の軽減が関与していることが示された.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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