1998 年 20 巻 2 号 p. 281-285
症例は書字困難を訴えた62歳右利き男性で,標準失語症検査(SLTA)で書字および語想起,物品呼称の障害を伴っていた.両側内頸動脈が閉塞し,左放線冠と左外側後頭側頭回に限局した脳梗塞があり,SPECTで左中大脳動脈領域の広範な血流低下を認めた.左浅側頭動脈一中大脳動脈吻合術直後より言語症状は改善し,術前のSLTAでの成績低下は全て消失し,血流低下の改善も認めた.本例の言語症状の原因は,梗塞巣よりも広範な部位での脳血量の低下と考えた.脳梗塞により言語症状を呈する症例の中には,頭蓋外一頭蓋内バイパス手術により改善する例があり,SPECTおよび頸動脈超音波を用いた血管系の検索が重要である.