脳卒中
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一過性脳虚血障害におけるTHAM(アルカリ化剤)の効果に関する実験的検討
高橋 恵理北岡 卓治久山 秀幸長尾 省吾
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1998 年 20 巻 4 号 p. 375-382

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抄録

一過性脳虚血障害におけるアルカリ化剤(THAM)の効果をラット中大脳動脈閉塞―再灌流モデルを用い検討した.THAM群は0.3MTHAM(2ml/kg/hr)を,対照群は生食を閉塞前より持続投与した.右中大脳動脈を閉塞し2時間虚血の後,再灌流2時間後に脳を摘出し,脳水分量,組織pH,および梗塞巣体積を測定した.その結果,基底核領域では有意な脳水分量の増加は認められなかった.一方,梗塞側皮質領域の水分量は対照群では全ての領域で有意に増加したが,THAM群では有意な増加は一部の領域のみであった.対照群では右中大脳動脈還流領域に一致して組織pHが低下したが,THAM群ではpHが低下している領域は有意に縮小した.梗塞巣体積は対照群に比べ,THAM群では有意に縮小した.THAMは一過性脳虚血部のアシドーシスと脳浮腫を改善し,梗塞巣を縮小させ,一過性虚血において神経細胞保護作用があることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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