2000 年 22 巻 4 号 p. 495-502
高体温に伴う高脳温状態下における脳循環自動調節能を閉鎖式頭窓法にて検討した.人工呼吸管理下のWistarratを正常脳温群(37℃:n=6),高脳温I群(39℃:n=6),高脳温II群(40℃:n=6),高脳温III群(41℃:n=6)の4群に分けた.ラット右頭頂部に閉鎖式頭窓を植え込み,平均動脈血圧が100から40mmHgの問の脳皮質血流(laser-Doppler flowmeterを使用,以下CBFLDFと略す)および脳軟膜動脈口径(CCDcameraによる観察)を連続的に測定した.
脳温上昇に伴い,安静時CBFLDFは増加し,脳軟膜動脈は拡張した.また,CBFLDFは高脳温III群(41℃)では血圧依存性に変化する傾向を示し,平均動脈血圧80mmHg以下から推計学的に有意な脳血流の減少を認め,脳循環自動調節能の破綻が示唆された.血圧低下に伴う脳軟膜血管の拡張反応は,脳温上昇に伴い高脳温I群(39℃)ですでにみられなくなった.
脳循環自動調節における脳組織血流と軟膜動脈血管の反応の解離は,血管口径による血流調節機構に違いによるものと考えられた.
臨床的に遭遇することが多い高体温・高脳温状態では脳血流の自動調節能の障害がみられ,血圧維持に十分注意する必要があることを強調した.