2003 年 25 巻 3 号 p. 322-327
症例は56歳の女性.突然の腰痛,歩行困難のため入院した.軽微の対麻痺,下肢腱反射の亢進,左Babinski徴候,右大腿の感覚低下,膀胱障害がみられた.胸椎MRIのT2強調画像にて,第10,11胸椎の硬膜内の脊髄後方に主に低信号,一部高信号の混在した病変がみられ,脊髄が前方へ圧迫されていた.髄内にも高信号域がみられたがflow voidはなかった.手術で病変を摘出し,画像所見と病理所見とからperimedullary spinal AVMと診断した.perimedullaryspinal AVMの典型的経過は慢性進行性のミエロパチーであるが,本症例の発症形式は突然発症であり非典型的であった.flow voidのないAVMが存在するので,急性ミエロパチーの診断の際にはMRIでflow voidが確認されなくてもAVMも考慮にいれるべきであると考えた.