2004 年 26 巻 2 号 p. 382-386
症例は41歳男性.6年前よりC型肝硬変,1年前から多発性肝細胞癌にて通院中.今回,発熱,全身倦怠感をきたし入院した.入院4日目に意識レベルが低下し,頭部CTにて左急性硬膜下血腫を認めた.緊急穿頭血腫除去術を施行したが,術後3日目(入院7日目)に硬膜下血腫が再発した.開頭術を施行し,左側頭部硬膜に腫瘍を認め切除した.病理組織診断は肝細胞癌であり,術後,意識レベルは回復した.その後,肝不全,腎不全をきたし,入院31日目に死亡した.剖検を施行し,肝細胞癌の頭頂部硬膜,骨髄,肝門部および肺門リンパ節への転移,肝硬変を認めた.以上より,肝癌硬膜転移による急性硬膜下血腫と診断した.担癌患者が硬膜下血腫をきたした場合,稀ではあるが,硬膜転移による可能性も考慮する必要があると考えた.