2004 年 26 巻 4 号 p. 503-507
虚血耐性とは事前になんらかのストレスがかかることによって,本来致死的であるはずの虚血負荷に耐性を持つ現象であるが,その細胞内機構は,未だ解明されていない.p38は細胞内シグナル伝達のひとつで,神経細胞においてもストレスならびにアポトーシスに重要な役割を果たしているとされている.砂ねずみ海馬遅発性神経細胞死モデルでは,5分間の両側内頸動脈閉塞で,海馬CA1神経細胞の細胞死がみられるが,虚血負荷前に2分程度の軽い虚血をかけると,その後の5分の虚血による神経細胞死は抑制され虚血耐性を獲得する.そこで2分虚血後のp38の発現を調べると,虚血6時間後から持続的にリン酸化p38の発現が認められた.虚血耐性の獲得において,リン酸化p38の発現が関与している可能性が示唆され,その解析は,神経細胞が持つ内在性の保護作用について重要な情報を与えてくれる可能性があると考えられる.