2006 年 28 巻 2 号 p. 301-305
症例は75歳女性である.糖尿病のコントロールは不良で,右上下肢に舞踏運動が出現した.T1強調MRIでは左線条体に高信号を認め,糖尿病性舞踏病(DHC)と診断した.T2強調MRIでは左線条体の一部に低信号を認めた.磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)では左被殻にN-アセチルアスパラギン酸/クレァチン(NAA/Cr)比の低下を認めたが,コリン/クレアチン(Cho/Cr)比は正常で乳酸の上昇もなかった.本例の原因として,高血糖により脳血液関門が破壊され生じた微小出血が考えられ,発症初期から確認できたことが特徴的であった.DHCの生検や剖検例は非常に少ないため,T2強調MRI及びMRSによる検討がDHCの原因を推察する上で重要な役割を果たすものと考えられた.