背景及び目的:抗血栓療法中に発生する出血性合併症,特に頭蓋内出血の実体と対策を明らかにする.
方法:循環器病研究委託費15公-1,分担研究課題(1)に対する後ろ向きおよび前向きの多施設共同研究.
結果:後ろ向き共同研究は,急性期脳出血947例を対象とした.抗血栓療法中の脳出血は全体の32%を占めた.抗血栓治療患者は他の患者に比べて,高齢で,男性,糖尿病,脳梗塞・心疾患の既往,小脳出血,入院約24時間後の血腫増大例が多かった.前向き共同研究では,抗血栓療法症例約4,000例を19カ月間(中央値)にわたって観察した.重症出血合併症の発症率は,抗血小板薬単剤服用患者で6.4/1,000人・年,複数の抗血小板薬例で9.8,ワルファリン例で10.7,両者の併用例で18.9であった.
結論:抗血栓療法中に発症した脳出血が脳出血全体の約1/3を占めた.抗血栓薬多剤服用例で重症出血合併が多かった.