脳卒中
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メタボリックシンドロームと脳梗塞発症における男女差
高橋 一夫卜蔵 浩和飯島 献一長井 篤山口 修平小林 祥泰
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2006 年 28 巻 4 号 p. 527-530

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抄録

メタボリックシンドロームとその危険因子数と脳梗塞発症のリスクを男女別に検討した.1988年~2002年までの脳ドック受診者中,過去に脳卒中の既往がなく,脳梗塞発症の有無を追跡し得た2,726例(男1,507例,女1,219例,平均年齢57.4±7.9歳平均追跡期間6.3±3.8年)を対象とした.メタボリックシンドロームの診断基準は我が国のものに準じたが,ウエスト周囲径に関しては男女ともBMI(body massindex)25以上で代用した.メタボリックシンドロームは男性で139%,女性で4.3%に認めた.女性ではメタボリックシンドローム有り群は無し群と比較し有意に脳梗塞発症のリスクが7.7倍(95%信頼区間:2.0~288)高かったが,男性では両群間に有意差を認めなかった.さらに,BMI25以上に加え,脂質異常(TG150mg/dl以上かつ/又はHDL40mg/dl未満),血圧異常(収縮期130mmHg以上かつ/又は拡張期85mmHg以上),血糖値異常(空腹時110mg/dl以上)の3つの危険因子がいくつあるかで群分けし,これらの群をBMI25未満かつ上記の危険因子数0の正常群と比較し,年齢,喫煙で調整を行い,脳梗塞発症のリスクを男女別に検討した.BMI25以上の男性では危険因子数0,1,2でも脳梗塞発症に関し有意差なく,危険因子数3になると脳梗塞のハザード比は6.5倍(11~14.0)になった.一方,BMI25以上の女性では,危険因子数0では有意な脳梗塞発症は認めなかったが,危険因子数1で4.1倍(1.0~41.5),危険因子数2で28.8倍(2.1~389),危険因子数3で23.9倍(1.1~505)と有意に脳梗塞を発症した。以上より,脳梗塞発症に関しては,明らかな男女差があり,特に女性においてメタボリックシンドロームの関与が強いことが示唆された.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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