脳卒中
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脳塞栓の臨床像
塞栓源となった基礎疾患による差異
長木 淳一郎山口 武典峰松 一夫平田 温澤田 徹
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1982 年 4 巻 2 号 p. 106-112

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抄録

塞栓源となる基礎疾患の存在, 症状の突発完成, 他臓器塞栓症, 脳血管撮影所見を診断基準として, 274例の急性期脳梗塞から48例の脳塞栓を選択した.塞栓源となった基礎疾患は, 心臓弁膜症20例, 不整脈17例, その他および不明11例であった.心臓弁膜症群と不整脈群の間で臨床像を比較すると, 意識障害を指標とした重症度に差はなかったが, 寝たきりとなるものは不整脈群に多く, 死亡するものは弁膜症群に多かった.脳血管撮影では動脈閉塞部位, 再開通の頻度は両群の間に差はなかったが, 栓子所見の頻度は弁膜症群が不整脈群より高かった.全身臓器の塞栓症の頻度は, 入院時の脳塞栓発作を含めると弁膜症群の方が不整脈群より約2倍高く, 脳塞栓発作後の再発性塞栓は, 弁膜症群20例に16回起こったのに対し, 不整脈群は17例に2回であり, 心臓弁膜症を基礎疾患にする脳塞栓は高率に再発性塞栓を起こし, これが弁膜症群に死亡が多いことの大きな原因となっていた.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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