脳卒中
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脳虚血と脳浮腫
石井 昌三
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1984 年 6 巻 1 号 p. 32

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抄録

虚血性脳病変に随伴して発生する脳浮腫の病態生理は非常に複雑で, これを先ずcytotoxic edema, 次いでvasogenic edemaに移行するという簡単な図式で捉えることは出来ない.
虚血性脳病変が脳浮腫を発生せしむる主な要因として, 1) 脳虚血そのものによる脳傷害, 2) 虚血原因の解除或は副血行路等にもとづく循環再開後に起る脳の諸変化, 3) 1) 及び2) により起る脳変化に続発する二次的な全身要因の変化, が挙げられる.
脳虚血はCBFの著明な減少により, 酸素, 基質の供給不全を生じ, 脳のenergy failure及びそれに基づく細胞内外の環境変化を生ずる.これ等の変化は比較的画一的で時間の経過と共に直線的に進行する訳ではないが, 勿論それ自身細胞死を生じせしめ得る.
循環再開が起ると, a) 虚血による脳血管障害や組織圧差即ちhydrostatic factorによる脳血管透過性の亢進, b) 循環再開後に起る脳代謝回復過程のheterogenecityによって生ずる二次的脳代謝異常の発現等が脳浮腫を一層助長する.
また脳虚血及び循環再開は, a) 必ずしも脳に瀰漫性の傷害を惹起せず, 脳は所謂selective vulnerabilityを持つことから, heterogenousな脳障害に基づく全身反応を起し, またb) 全身の血管内因子に高度の変化を結果し, これ等も脳浮腫の進行を助長することがある.
これ等の病態の正しい把握が適切な治療方針の確立に必須であり, この線に沿った著者の考えを文献的考察と共に述べる.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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