1984 年 6 巻 3 号 p. 263-268
左被殼傷害で失語症を呈した2症例と, 右被殼傷害で視空間失認を呈した1症例を報告した.2例の失語症のうち, 1例はSchuell分類の感覚運動障害を伴う失語に相当し, 他の1例は健忘失語類似であった.伝導失語は2例とも認めなかった.視空間失認を呈した1例は, 日常動作では軽度の着衣失行を認めた程度であったが, 我々の考案した定量的空間認知テストにより重度の障害が発見されたものである.また, 失語症を呈した2症例でも軽度の空間認知障害の潜在が明らかにされた.
3症例は, 左半球の言語処理, 右半球の空間認知という大脳の機能的非対称性を, 被殼においても症候学的に支持するという点で重要である.