脳底動脈分岐部動脈瘤のクリッピング後に内側縦束症候群を呈した1例を報告した.症例は高血圧症の既往を有する48歳, 女性で, day 9, grade IIで入院, day 14にネッククリッピングを行なった.術後から輻輳障害を伴う左内側縦束症候群を呈したが, 他に神経学的異常はみとめられず, 輻輳障害, ついで内転障害の順に回復した.
本例でみられたMLF症候群は, 術中操作一おそらくは穿通動脈の閉塞一による中脳レベルでの内側縦束の障害によると推定される.その原因が特異であり, 症状が単独でCoganの前部障害型に一致することがその臨床経過とともに興味深いと考え, 発生機序に関して若干の考察を加えた.