大動脈炎症候群は頸部血管にも好発し, 種々の脳虚血症状をひきおこすことは既に知られている.しかし本症における頭蓋内血管に関する文献的記載は非常に乏しく, 十分な検討がなされてきたとは言えない.今回我々は下行大動脈型大動脈炎の患者で, 経過中3度のTIAをきたし両側中大脳動脈の閉塞を認めた1例を経験した.若年女性で, 両側とも症状的にはTIAに留ったこと, TIAの時期に一致して炎症反応の再燃を認めたこと, 栓塞症や他の血管炎は否定的であったこと, などから, この中大脳動脈病変は大動脈炎症候群の一環として生じたものと考えられた.本症における四肢末梢筋型動脈病変の報告が注目されてきている現在, 疾患概念の検討上極めて興味ある1例と思われた.