1986 年 8 巻 3 号 p. 219-223
高血圧性基底核部出血36症例を入院時のCT所見から4群に大別し, multimodality evoked potentials (MEPs) を指標として血腫の進展度と脳機能障害の関係, さらにその可逆性につき検討した.CT上血腫が内包前脚までに止る症例の71.4%では, MEPsの異常は軽度で機能的予後も良好であった.しかし, 他の28.6%ではSEPの異常度が強く機能的予後も不良であった.血腫が内包後脚に及ぶ場合, 50%の症例がSEPに高度の異常を伴いVEPやABRにも異常がみられ機能的予後は不良であった.さらに血腫が大きく内包の前後脚, 間脳へ進展する場合には, MEPsいずれにもより高度の異常がみられ, 上位脳幹, 半球性にも高度の障害が出現すると考えられた.なお, 血腫の脳室内穿破の有無とMEPsの異常度との間には明らかな関連はみられなかった.本症ではCTとともにMEPs所見を分析することにより, 脳機能の障害度やその可逆性の判定がある程度可能であり, 治療方針の決定上有益である.