1987 年 9 巻 4 号 p. 291-297
高血圧自然発症ラット (SHR) を使用して両側総頚動脈結紮法 (BLCL) により脳虚血を作成し, SHRに存在する高血圧の降圧治療を行い, その影響につき, 脳循環代謝・脳浮腫を検討した.降圧治療はレセルピンの腹腔内投与により行った.後頭部深部での脳循環は降圧後の降下血圧と正の相関を示した.脳代謝では前頭部においてはATP, lactate, c-AMPとも降圧治療群および非治療群との間に差異を認めなかった.後頭部においては, 降圧群ではATPは低値を, lactateは高値を示した.c-AMPは差異を示さなかった.ATP, lactate値は降圧後の血圧値とそれぞれ正および負の相関を示した.脳含水量は前頭部, 後頭部ともに降圧群で有意の高値を示し, 降圧後の血圧値と負の相関を示した.降圧治療は虚血の強い前頭部では脳浮腫を増強させ, 虚血程度の比較的軽度な後頭部では, 降圧後の血圧値に一致して脳循環代謝障害および脳浮腫を増悪させた.