心臓外科手術に伴う中枢神経障害としては, 従来脳潅流圧低下や, micro-embolismによる脳梗塞が強調されている.
硬膜下血腫については抗凝固療法との関連で強調されてはあるものの, 心臓外科手術との直接的な因果関係について言及した臨床報告は殆ど認められない.
我々は心臓外科術後神経症状を呈した39症例について頻回のCT検査を行った結果, 8例の硬膜下血腫例を確認し得た.これら心臓外科手術直後発生した硬膜下血腫症例の臨床像とCT所見に検討を加え, 診断時の問題点, 急性から亜急性に進行する病像等を明らかにした.術後管理期間中に発症した硬膜下血腫は心臓外科手術の直接の合併症とみなすべきと考えられ, 今後心臓外科術後にみられる中枢神経障害の診療に際しては常に硬膜下血腫の存在を念頭におく必要があると思われる.