ウイルス
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特集1 ウイルスとインターフェロン
5. C型肝炎ウイルスによるウイルス感染初期応答の阻害
小原 道法井上 和明
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2004 年 54 巻 2 号 p. 197-204

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抄録

C型肝炎ウイルスは感染後に宿主の免疫応答により排除されず, 高率に持続感染して慢性肝炎, 肝硬変, 肝細胞癌の原因となる. これまでは持続感染が成立した後のHCVに対する獲得免疫の解析やHCV蛋白のインターフェロン (IFN) のシグナル伝達に及ぼす影響が主として解析されてきた. 一方感染直後に応答する自然免疫とHCVとの関係はほとんど解析されてこなかった. そこで, HCVが初期ウイルス応答に与える影響について検討した. HCVの全長遺伝子がコンディショナルに発現し, かつ細胞内でウイルスが複製しうる系を作成して, HCV遺伝子をスイッチング発現させることに伴って修飾阻害されるインターフェロンシグナル伝達経路を明らかにし, その機序を解析した. 特に, 複製中間体である2本鎖RNAにより活性化されるIRF-3とHCVの関係について解析した. HCVのコア蛋白質により, IRF-3の2量体形成が阻害され, IRF-3の細胞質から核内への移行が阻害された. また, IFN-βの誘導が抑制されていることが明らかとなった. IRF-3のリン酸化およびpolyICにより誘導されるIFN-βの誘導には変化は認められなかった. HCVコア蛋白質はインターフェロンシグナル伝達系のもっとも初期の反応であるIRF-3の2量体形成および核内移行による活性化を阻害しており, その結果として細胞内持続感染の成立に関与している可能性が示された.

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© 2004 日本ウイルス学会
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