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ウイルス
Vol. 57 (2007) No. 1 P 47-55

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http://doi.org/10.2222/jsv.57.47

特集

 アデノ随伴ウイルス(AAV: adeno-associated virus)ベクターは,非病原性ウイルスに由来し,非分裂細胞に効率良く遺伝子導入でき,そのような標的細胞では遺伝子発現が長期間持続することから,遺伝子治療用ベクターとして期待されている.また,適切な血清型のAAVベクターが標的細胞の種類に応じて用いられる.神経細胞を標的とした遺伝子治療については,パーキンソン病が最も有効性を期待できる対象疾患であると考えられている.パーキンソン病は黒質-線条体系ドパミンニューロンが選択的に障害される進行性の神経変性疾患である.遺伝子治療では,線条体でドパミン合成系酵素を発現させる方法が考えられている.臨床応用の第一段階では,芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC: L-DOPAをドパミンに変換する酵素)を発現するAAVベクターを線条体へ注入し,L-DOPA内服と組み合わせるストラテジーが採用されている.この方法では,ドパミン産生をL-DOPA投与量でコントロールできることから安全性が高い.次に,筋細胞を標的とする場合は,蛋白質補充遺伝子療法への応用が考えられ,単一遺伝子病の血友病やFabry病などが対象となる.癌に対する遺伝子治療については,腫瘍血管新生や転移・播種の抑制を狙った方法が検討されている.また,幹細胞レベルで長期の遺伝子発現が必要な場合は,治療遺伝子の組込みによる挿入変異を最小限に抑えなければならない.そこで,野生型AAVの組込み装置を利用し,第19番染色体長腕AAVS1領域(19q13.3-qter)に部位特異的に治療遺伝子を組み込ませるユニークな方法の開発が進められており,安全性の観点から注目される.

Copyright © 2007 日本ウイルス学会

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