ウイルス
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高病原性鳥インフルエンザと野鳥の関わり
伊藤 壽啓
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2009 年 59 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

 H5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが世界規模の大流行を引き起こし、今尚、各国の養鶏産業界に甚大な被害を与え続けている.またインフルエンザウイルスは鳥類に由来する最も重要な人獣共感染症の病原体の一つであり,本ウイルスの人への直接感染事例もまた増え続けている.本ウイルスは鶏やアヒルなどの家禽以外にも多くの鳥類が感受性を有することから,とくに野生鳥類が本ウイルスの伝播,流行拡大に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている.しかしながら,自然界における本ウイルスのレゼルボアとしての野鳥の役割は未だ完全には理解されていない.そこで高病原性鳥インフルエンザウイルスの生態に果たす野鳥の役割を明らかにする目的で,渡り鳥を含む国内野鳥を対象としたウイルス保有状況調査が環境省,山階鳥類研究所および鳥取大学で実施された.これまで3株のH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスが分離されている.その一つは2007年1月に熊本県相良村において衰弱して発見されたクマタカから分離された.他の2株は2008年4月と5月に青森県十和田湖において斃死したオオハクチョウから分離された.
 渡り鳥は季節性に地球規模で移動することから,同様の問題は他の国々においても常に起こり得る.野鳥を対象とした広範囲な共同疫学調査が高病原性鳥インフルエンザの国際防疫に重要であると考えられている.

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© 2009 日本ウイルス学会
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