ウイルス
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特集:エボラ出血熱
西アフリカのエボラウイルス病発生状況
有馬 雄三島田 智恵
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2015 年 65 巻 1 号 p. 47-54

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抄録

 西アフリカにおけるエボラウイルス病(Ebola Virus Disease: EVD)の流行は,2014年3月,最初にギニアから報告され,その後,国境を接するシエラレオネ,リベリアにも感染が拡大していった.これら3カ国でのEVDの流行は,流行期間,地理的広がり,死亡例を含めた症例数において過去に例をみない大規模なものとなり,最初の報告から1年を経た2015年4月現在でも流行はいまだ終息していない.また,これら3カ国以外にも,アフリカ大陸以外の国々(イギリス,スペイン,米国)を含めた6カ国でEVD症例が報告されたが,その発端となったのは,ギニア・シエラレオネ・リベリアのいずれかの国での感染例であった.病原体であるエボラウイルスについては,ヒトからヒトへの感染経路や予防法が良く理解されており,ウイルスの病原性や感染性の変化も確認されていない.しかし,今回このような大規模な流行になった要因としては,元来脆弱だった社会基盤や医療・公衆衛生の制度に加え,EVDを初めて経験する医療従事者らを含む国民や国にとって,適切な対応を迅速に行うことが容易ではなかったこと等が挙げられるだろう.

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© 2015 日本ウイルス学会
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