ウイルス
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特集:エボラ出血熱
エボラウイルスの宿主細胞侵入機構
櫻井 康晃
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2015 年 65 巻 1 号 p. 71-82

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抄録

 エボラウイルスは紐状の粒子構造を持つエンベロープウイルスであり,ヒトやその他の霊長類に感染することで重篤な出血熱を引き起こす.宿主細胞への侵入は,増殖サイクルの中で最初の必須過程であり,治療標的の一つとして盛んに研究されてきた.細胞侵入に不可欠なウイルスタンパク質である表面糖タンパク質GPに加えて,特徴的な粒子構造がウイルス因子となり,様々な宿主因子がウイルスと相互作用することで宿主細胞への侵入が成立する.エボラウイルスは,まずGPを介して細胞表面タンパク質と結合し,細胞内へと移行後,エンドソーム小胞に包まれながら酸性pHを伴う細胞内分画へと移動していく.その後,宿主プロテアーゼによりGPのプロセッシングが起こり,細胞内受容体との相互作用が可能となる.そして,適当な条件が揃った環境下で,GPの大規模な構造変換を介してウイルス膜とエンドソーム膜の融合が起こり,細胞侵入が完了する.それら感染ステップに関わる宿主因子の同定,及びGPの構造解析を中心として,エボラウイルスの基礎研究は近年目覚ましい進展を見せている.本稿では,エボラウイルスの細胞侵入機構を最新の知見も踏まえて紹介していく.

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© 2015 日本ウイルス学会
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