ウイルス
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総説
植物ウイルスの拡散:農業史及び人類移動との時間的関連
大島 一里
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2015 年 65 巻 2 号 p. 229-238

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抄録

 ベイズ法に基づいた分岐年代推定ソフトウェアーを用いて,ウイルスの年代推定が最近盛んに行われている.筆者は世界中から3種の代表的な植物ウイルスを独自に採集し,それらのゲノム塩基配列情報を決定後,ウイルスの拡散経路が農業史や人類移動にどのように関連しているのか,時間軸(タイムスケール)について解析した.農業が開始する以前の世界では雑草などにウイルスが潜んでいたと思われるが,現在は食用作物,特用作物,牧草・芝草,草花,果樹そして野菜と様々な農作物に感染し,現代の人類生存に大きな影響を及ぼしている.野菜は食料として重要であるが,中でも大きな割合を占めるのがアブラナ科の野菜である.多くのアブラナ科植物の起源は地中海沿岸地方を含んだヨーロッパ南部や小・中央アジアと言われている.アブラナ科の野菜に大きな被害を与えている代表的な3種のウイルス,ポティウイルス科ポティウイルス属のカブモザイクウイルス,カリモウイルス科カリモウイルス属のカリフラワーモザイクウイルスそしてブロモウイルス科ククモウイルス属のキュウリモザイクウイルスを取り上げ,植物ウイルス分子進化に纏わる時間軸に関連した新しい知見を解説する.

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© 2015 日本ウイルス学会
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