ウイルス
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特集:C型肝炎ウイルス
C型肝炎治療法の進歩
鈴木 哲朗中島 謙治千田 剛士伊藤 昌彦
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2015 年 65 巻 2 号 p. 239-244

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抄録

 C型肝炎ウイルス(HCV)は肝疾患の主要な原因因子で持続感染しやすく,そのキャリアは我が国だけで約200万人とされている.C型慢性肝炎は進行して肝細胞がん発症に至ることから,早期に診断しHCVを除去するための抗ウイルス治療が求められる.1992年より基軸であったインターフェロン(IFN)療法には不耐容例,難治例などの問題があり治療上制約があった.90年代,培養細胞での強制発現系また精製タンパク質を用いて個々のHCVタンパク質の性状,機能解析が行われ,プロテアーゼ,ポリメラーゼといった創薬標的も見出された.2000年以降,レプリコンシステム及びJFH-1株による複製,感染増殖細胞系の確立に伴いHCV阻害剤スクリーニングが容易になり創薬研究は加速した.2011年,HCVに対する初めてのdirect-acting antivirals (DAA)であるNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤がIFN/リバビリンとの三剤併用療法として認可された.その後,第二世代のプロテアーゼ阻害剤またNS5A阻害剤が登場しIFNフリー,DAAのみによる治療法も開始された.さらにNS5Bポリメラーゼ阻害剤が承認され,IFNフリー療法の選択肢も増えた.C型肝炎は「免疫応答での排除は難しいにもかかわらず,効果的な抗ウイルス薬によって排除・治癒が期待できるようになった歴史的に初めての感染症」の局面に入ったと言える.

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© 2015 日本ウイルス学会
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