ウイルス
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平成27年杉浦賞論文
ヒト化マウスモデルを用いたウイルス感染病態の解明
佐藤 佳
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2016 年 66 巻 1 号 p. 91-100

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抄録

 ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)は,エイズの原因ウイルスとして1983年に同定されて以来,現在に至るまで約7,000万人もの感染者を生み出したと推定されている.1990年代後半に抗レトロウイルス薬多剤併用療法が開発・導入されたことにより,日本を含む先進国において,エイズは“死の病”ではなくなった.また,分子生物学の発展により,HIV-1複製の分子メカニズムの詳細が明らかとなった.しかしながら,HIV-1感染症を根治する方法は未だ確立されていない.その一因として,HIV-1感染を支持・再現できる適切な動物モデルがないことが挙げられる.筆者らはこれまで,生体内におけるHIV-1感染病態のダイナミクスを再現することを目的として,“ヒト化マウス”という新たな動物モデルを作出することに成功した.また,このモデル動物を用い,生体内におけるHIV-1複製ダイナミクスにおけるウイルスタンパク質と宿主タンパク質の相克の詳細について解析を行ってきた.本稿では,現在の“ヒト化マウス”モデルに至るまでの歴史と筆者のこれまでの研究の経緯について概説すると共に,筆者らがこれまで“ヒト化マウス”モデルを用いて明らかにしてきた研究成果を紹介する.

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© 2016 日本ウイルス学会
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