2023 年 73 巻 2 号 p. 163-172
2019年から始まった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によるパンデミックから4年目を迎えようとしている.当研究室では,2020年6月からいつまでパンデミックが続くのか,日常生活がいつまで制限されるのか予想ができない中,レセプターデコイを使った治療薬を開発するプロジェクトに取り組んだ.レセプターデコイは,SARS-CoV-2のレセプターであるアンジオテンシン変換酵素2(Angiotensin-converting enzyme 2 : ACE2)を利用し,SARS-CoV-2のスパイク蛋白質との結合能を亢進する変異を導入したACE2組換え蛋白質である.この高親和性ACE2を囮(おとり=decoy(デコイ))蛋白質としてSARS-CoV-2が本来のACE2に結合するところをACE2デコイに置き換えることで感染を阻害し治療効果を期待する戦略である.本稿では,ウイルス学とは異なる多くの研究者の先生との共同研究の中で進めてきたACE2デコイ開発を紹介する.