ウイルス
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インフルエンザウイルスゲノムの転写・複製の分子機構
永田 恭介
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1993 年 43 巻 2 号 p. 233-243

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抄録

マイナス (-) 鎖RNAウイルスの遺伝子は単独で細胞に導入しても, その遺伝子発現や増幅は起こらない。最近になりインフルエンザウイルスをはじめとして, いくつかの (-) 鎖RNAウイルスで細胞に導入すると感染性ウイルス粒子を産生する人工RNA-タンパク質 (RNP) 複合体の再構成が可能となった。これらの糸の開発を支えたのは長年にわたる転写・複製機構の研究であった。我々はインフルエンザウイルスを対象に, まず可溶化ウイルス粒子を用いた無細胞 (in vitro) 転写糸および感染細胞より調整した核抽出液を用いた in vitro 複製糸を確立した。これらの系の生化学的な解体と再加構成により転写や複製過程に関与する因子群が同定され, それらの機能についての解析がすすめられた。また得られた情報を基盤に先駆的なインフルエンザウイルス感染性RNP系が確立された。その結果, ウイルス遺伝子の転写・複写にはウイルスの遺伝子産物のみならず宿主の機能も重要な役割を担っていること, 遺伝子自身の特徴的な機能加構造が必要であることが明らかとなった。

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© 日本ウイルス学会
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